バイセル Tech Blog

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エンジニア採用の短期リードタイムを実現する会議体設計 -エンジニアと人事による採用チームの改善の仕組み化と学習文化づくり-

こちらは バイセルテクノロジーズ Advent Calendar 2024 の12日目の記事です。

昨日はメントスさんによる マイクロサービスに向き合った結果、新規サービスのバックエンドを既存の基盤システムに組み込む意思決定をした話 でした。

CTO室でエンジニアリングマネージャー(EM)を務める @naoto_pq です。 バイセルに入社してからエンジニア採用(新卒/中途)を中心にテックカンパニーとしての組織づくりを進めてきました。

人事のメンバーと共にエンジニアの採用チームとしてチームを立ち上げてオペレーションを構築し、社内の多くのエンジニアにも協力してもらい、全員採用を実現する体制ができてきました。

会議設計においては定例だけではなく、朝会、振り返り会、採用勉強会などの会議体も取り入れることで、採用チームとしてのスムーズな連携、オペレーション改善、共通言語づくりを進めて、候補者の選考における短期のリードタイムを実現しました。今回はその事例を共有したいと思います。

エンジニア採用に関わるEMや人事の採用担当者、これから本格的にエンジニア採用に取り組もうと考えている方々の参考になれば幸いです。

採用チームの体制と課題

バイセルではCTOをはじめとしてエンジニア組織のEMやTL、人事組織のマネージャーなどによって全員採用で取り組んでいますが、日々のオペレーションは採用チームがメインで担当しています。

採用チームの体制は以下の通りです。

採用チームの体制

主な役割

  • 採用マネージャー:CTO室EM。自分
    • 役割:エンジニア採用のプロジェクト、プロセスのマネジメント
  • リクルーター:人事部のエンジニア採用担当(中途/新卒)
    • 役割:候補者やステークホルダーとのコミュニケーション
  • コーディネーター:CTO室アシスタント/人事部アシスタント
    • 役割:日程調整などのコーディネーション業務

チーム立ち上げ当初はエンジニア組織に所属している自分と、人事組織のリクルーター、コーディネーターでタスクベースでの分担はあったものの、採用プロセス全体を理解した設計はできておらず、業務プロセスを見直しながら成果につなげていく取り組みが不十分でした。

候補者ファーストな採用体験を提供するためには、採用チームとしての強化が欠かせません。そこで、会議体の設計という切り口からもアプローチすることにしました。

会議体の設計

自分は過去にスクラムマスターとして開発チームを支援することが複数回ありました。その経験から、うまく設計された会議体はチームに一定のリズムをもたらし、対話の場として機能することを実感していました。 その時々で必要な打ち合わせもありますが、現在の採用チームでは主に以下4つの会議体で設計されています。

会議体 目的 参加者 頻度 / 時間 主なアジェンダ
採用定例 目標に対する採用進捗の確認、全体的な共有・相談事項の整理 - CTO
- 本部長
- 部長
- CTO室EM
- リクルーター
週次 / 30分 - 数値進捗共有
- 求人ポジション×採用チャネル状況とアクションの確認
- 入社者情報
- 予算管理
朝会 候補者ごとのステータスとネクストアクションの確認 - CTO室EM
- リクルーター
- コーディネーター
日次 / 30分 - 候補者ステータス確認
- 書類選考・面接評価の確認
- 課題・懸念点の共有
振り返り会 結果やプロセスの振り返りと改善策検討 - CTO室EM
- リクルーター
- コーディネーター
週次 / 1時間 - 前回TRYの確認
- KPTによる振り返り
採用勉強会 エンジニア採用や人事としてのスキルアップにつながるテーマの勉強会 - CTO室EM
- リクルーター
- コーディネーター
週次 / 1時間 - 本の紹介、目的の共有
- 章毎に分担
- 黙読
- 共有と議論

今回は一見すると採用業務に必要ではないようにも思える「振り返り会」と「採用勉強会」にフォーカスしてご紹介します。

振り返り会

この会は、スクラムのレトロスペクティブをイメージして実施しています。

採用を担当するようになって強く感じたのは、採用チームは面接や面談といった目に見える調整だけでなく、日々多くのコミュニケーションやオペレーション業務が発生しており、油断していると簡単に業務量が膨らみやすいという点です。

振り返り会を定期開催することで、チーム・個々人の業務状況を把握し、そこからオペレーションの自動化やプロセスの効率化といった改善活動を継続的に進められるようになりました。

この振り返り会では開発チームでのKPTと同様にオンラインボードツールを活用し、課題整理、原因特定、そしてTry(改善アクション)の策定をしています。会議の冒頭では前回考えたTryの効果も確認しています。

毎回多くのフセンが張り出されるボード

今年も日程調整ルールの見直しやATS切り替え運用、面接官の面接数を自動集計するGASの実装など、多くの改善が生まれました。

エンジニアが採用オペレーションに深く関わること、開発での知見を活かしたオペレーション設計や、ZapierやGASといったツールを駆使した問題解決が可能です。ただし、過度な自動化や属人化には注意が必要です。

また、この振り返り会はチームに新しいメンバーが加わった際のオンボーディングやチームビルディングの側面でも有効だと感じました。チーム全体でメンタリングを意識した上で場を設計して問いを投げかけることで、業務状況や気持ちを共有する場として機能しています。

採用勉強会

エンジニア採用を推進する中で、エンジニア領域と人事領域にまたがる知識やスキル、仕事への向き合い方をお互いに学び合う必要性を強く感じました。そこで毎週1時間程度、エンジニア採用やキャリア、人事関連の知識、エンジニア的思考法、ビジネススキルなど、多彩なテーマで勉強会を実施してきました。

この勉強会では「チームとして継続的に学ぶ習慣づくり」と「テーマとトピックの概要を知ることでのチームとしての共通言語づくり」を目的としています。

進行方法は、書籍を扱う場合は会議の時間内で章ごとに担当を割り当て、内容を読み込み、ドキュメントでアウトプットを共有するといったシンプルな方法を採用しました。これによって1ヶ月1冊程度のペースで学びを進めていきました。

この1年で扱った書籍は以下になります。

エンジニアリング組織論への招待
ITエンジニア採用とマネジメントのすべて
Team Geek
イシューからはじめよ
エンジニアリング組織論への招待 ITエンジニア採用とマネジメントのすべて Team Geek イシューからはじめよ
エンジニアの思考法や仮説検証アジャイルの考え方が学べる エンジニア採用とマネジメントが学べる HRTの原則から組織で活躍するエンジニア像をイメージすることができる 読むと「それはナイスイシューですね!」という会話ができる
入門 考える技術・書く技術
[図解「いいキャリア」の育て方]
人事担当者が知っておきたい、8つの実施策。7つのスキル。
鬼速PDCA
入門 考える技術・書く技術 図解「いいキャリア」の育て方 人事担当者が知っておきたい、8の実践策。7つのスキル。 鬼速PDCA
ロジックツリーに対する審美眼が磨かれる 情報として知ってる以上の「キャリア」に対する解像度が上がる 採用以外の人事領域やその歴史を知ることで、組織に対する理解が深まる チーム・個人での改善の基本となるPDCAが身につく

また、輪読会だけでなく、外部勉強会の情報共有や、人事・エンジニア採用において参考になる 久松剛 さん や @konifar さんらの発信をSlackに流すなどもしています。それによって市場トレンドや候補者理解を深めて、いつも情報をキャッチアップし続けています。結果として学習文化が採用チームとしても定着しました。

振り返り会と採用勉強会という2つの会議によってコミュニケーション量を確保することにつながり、それがチームとして機能するために重要な要素だったようにも感じます。

効果

採用定例や朝会を活用することで、面接官のエンジニア、リクルーター、コーディネーターが円滑に連携でき、余分なリードタイムが削減されました。その結果、この1年間ほどの 内定承諾者の一次面接の日からオファー面談日に至るまでのリードタイム期間は平均29日 となっています。

選考ステップ

採用チームとして「候補者ファースト」を掲げ、候補者の方とはもちろん、関わる全ての方々と丁寧に期待値をすり合わせながら選考を進めることを重視しています。そんな中で一次面接からオファー面談までの時間が1ヶ月程度というのは、候補者の方にとっても余計な待ち時間が発生して心配になることはない、スムーズな選考体験を提供できているのではないかと考えています。

また、採用チームでは採用デックや求人票の作成なども担当しています。それらの業務を進めるにあたっても採用勉強会で学んだことを活かして企画や作成、レビューをしています。よろしければぜひご覧ください。

speakerdeck.com

herp.careers

自分自身もエンジニア採用に深く取り組むことで人事や組織への理解が深まり、今後のテックカンパニーとしての組織づくりにもつながる貴重な知見を得ることができました。

明日の バイセルテクノロジーズ Advent Calendar 2024 は 望月さんによる 「フロントエンド新規開発のルーティングライブラリに React Router ではなく TanStack Router を採用した話」です。 お楽しみに!