バイセル Tech Blog

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Win Session - バイセルの成果共有文化を育む取り組み

こんにちは! バイセルのプロダクト開発本部の相曽(@yui_ai0216)です。

「隣のチームは最近なにやってるんだろう?」、リモートワークが当たり前になった今、こう思ったことがある方は少なくないのではないでしょうか。

バイセルのテック組織でも、まさにこの静かな隔たりが課題になっていました。 その壁を壊すために始めたのが「Win Session」です。 各チームの代表者が成果や学び、時には失敗談を5分で発表し、チームの垣根を越えて Win! と称え合うイベントです。

本記事では、運営メンバーとして携わった立場から、Win Session の始まりと、回を重ねながら改善していった過程を中心にお伝えします!

理想とするテック組織の姿と現状の課題

あくまで一例ですが、私たちが目指したいと考えている組織像は、以下のような風通しのいいテック組織です。

  • 他チームのエンジニアに「それ、どうやったんですか?」とSlackで気軽に聞ける
  • 障害が起きたとき「実はうちも似たことがあって」と経験を共有できる
  • 誰かのチャレンジに対して素直に「すごいね」と言い合える

しかし現実には、この理想にはまだ少しだけ距離があります。 その背景の一つが、現在の働き方です。バイセルのテック組織はハイブリッドワーク体制を導入しています。 複数のチームが出社日をずらして活動しており、各チームが異なるプロダクトやドメインを担当しています。 柔軟な働き方ができる一方で、この体制ならではの課題も見えてきました。

見えてきた3つの課題

1. 他チームの動きが見えにくい

隣のチームがどんな技術的チャレンジをしているのか、どんな工夫で問題を解決したのか、知っていれば自チームでも活かせたはずの知見が、各チームの中に閉じてしまっているため、気付かないうちに別のチームが同じ問題を1から解いている。 そんなことがポツポツと発生していました。

2. チームを横断した交流の薄さ

バイセルのテック組織では出社日にはチームで集まってランチを取ることが多いです。 同期やチーム内のメンバーとは会話する機会があっても、他チームの先輩・後輩などのナナメの関係がほぼない人もいます。 決して仲が悪いわけではないのですが、「カジュアルにちょっと聞いてみる」が難しく、丁寧なSlackメッセージを送るような絶妙な距離感がありました。

3. 個々の頑張りが埋もれてしまう

小さな成功体験、地道な改善、失敗から得た学び、どれも賞賛されるべき価値のあるものだと考えています。しかし、チーム外に気付かれることなく、アウトプットする場がないままチームの中だけで消化されていました。

課題解決のための仮説

こうした課題に対して、私たちが考えたのは「定期的にみんなで集まって、お互いの話を聞く場を作ろう」というシンプルなアイデアでした。

私はプロダクト開発チーム所属のかたわら、コミュニケーションWG(ワーキンググループ)にも所属しています。 これはテック内の文化醸成とコミュニケーション活性化のためにイベントなどを企画・運営するチーム横断組織で、異なるチームから集まった5名のメンバーで構成されています。 WGには特別な権限はありませんが、異なるチームから集まっている分、各チームの状況も把握しやすく横断的な企画を動かしやすい組織です。 さらに何か企画を提案すると部長や本部長から「いいじゃん、やってみて」と後押しをもらえる環境でした。

Win Session のアイデアは、WGのグループミッションである「社内イベントを通して組織文化を醸成する」を達成するために、メンバーの一人から提案されたものです。

Win Sessionはそんな風通しのいい、より良い組織に近づくための一歩として始めました。

Win Session とは

Win Session のルールはシンプルです。 各チームから代表者が登壇し、持ち時間は約5分のLT形式で発表してもらいます。 発表内容は、技術的な成果、プロセス改善、学びやチャレンジなど自由で、失敗談も大歓迎としています。 開催はハイブリッド形式で、テック組織全体の出社推奨日に合わせて実施しています。

「Win Session」という名前ですが、決して成功だけを求めているわけではありません。 失敗から学んだことや、困難を乗り越えた経験もまた Win です。

なぜイベント形式なのか

ナレッジ共有なら、Slackや社内Wikiでもできるのでは?と思うかもしれません。 しかし、Slackの投稿は流れていきますし、社内Wikiは書いても見に来てもらえないと意味がありません。 どちらも能動的に自分から取りに行くことが前提の仕組みです。

私たちが解決したかったのは「普段自分のタスクに集中し過ぎてしまっていて、他チームなどテック組織が何をしているか知らない」という状態です。 それには、自分から情報を取りに行かなくても自然と耳に入ってくる仕組みが必要でした。 全員が同じ時間に集まって発表を聞くイベント形式なら、受動的でも他チームの話に触れられます。 さらに、その場で質疑応答や雑談が生まれれば、関係構築にもつながるはずだと考えました。

Win Session会場の様子(写真は最新のイベント時に撮影したもの)

回を重ねて育てた Win Session

1回目:思うようにはいかなかった

正直に言うと、初回の Win Session の反応は微妙でした。

場が淡々と進行してしまい、拍手はあるものの空気が温まりきらないような感じでした。 運営側も、発表者も、参加者も、全員がこのイベントをどう受け止めればいいのか掴みきれていないような空気感でした。

このままだと2回目はもっと冷めるかもしれない。そう思った私たちは、2回目に向けて改善を始めました。

2回目:場の作り方を変えた

第2回からは業務時間中ですが飲食OKにしてカジュアルな雰囲気作りを心がけました。 あわせて、数名のメンバーに事前にサクラ役をお願いしておきました。 最初の反応を誰かが作らないと周囲も反応しづらいので、場を温める最初の一歩は意図的に仕込む必要があると考えました。

また、発表者に向けては登壇台の横に別ディスプレイを用意し、常にSlackのスレッドを表示し続けることでリスナーの反応を確認できるようにしました。

結果、2回目の Win Session は明らかに空気が変わったと感じていました。 Slackには「それいいですね!」「うちでも試してみたい」といったコメントやリアクションが飛び交い、会場からは声援や笑い声が上がっていました。発表者と参加者の間にリアルタイムのやりとりが生まれていました。

Win Session中のSlackでの反応

一方で、発表者からは課題も寄せられました。「場が盛り上がっているのが感じられて発表しやすかった」「Slackでのリアクションや会場の笑い声が励みになった」という声があった反面、「発表中、リスナーがSlackへの打ち込みで視線がPCに向いていて、リアクションが見えづらかった」「登壇台の横にディスプレイは設置されていたが、発表に集中していると確認する余裕がない」という指摘もあったのです。

3回目以降:「リアクションを届ける距離」を縮める

2回目で見えた「発表者がリアクションを確認できない」という課題を解決するには、発表者がすでに見ているスライドの上にコメントを届けるしかないと考えました。 そこで3回目では、Google Meetのコメントがスライド上を流れるChrome拡張機能を自作しました。

Chrome拡張機能によって発表スライド上にコメントがニコニコ動画のように流れている画面。発表者はスライドを映したまま参加者のリアクションを視界に入れることができる

これがかなり効いたと感じています。発表者は発表スライドを見たままリアクションを受け取り発表中にレスを返したり、オンライン参加者も1画面で発表とリアクションを追えるようになりました。

数字にもこの変化が表れています。発表中のコメント投稿数は、1回目は66件でしたが4回目には771件へと増えました。打ち手ごとの推移は以下の通りです。

  • 1回目: Slackでリアクションしてほしいとお願いした(Slack投稿数: 66件)
  • 2回目: 発表セッションごとにSlackスレッドを用意し、登壇台の横にリアクション確認用ディスプレイを設置した(221件)
  • 3回目: 発表スライド上にコメントを重畳表示 → 発表者の視界に自然と入ってくる(570件)
  • 4回目: 仕組みが定着し、参加者の発信もさらに増えた(771件)

印象に残った2つの発表

Win Session を通じて、組織にどんな変化が生まれたのか。特に印象に残った発表を2つ紹介します。

1つ目は、初回(昨年の10月)に発表されたモッチーさん(@hi_mochy)の「Jiraチケットを作るだけでDevinがPull Requestを出してくれる仕組み」です。

PdMはコードを書けないけれど、エンジニアに頼むほどでもない細かい修正依頼がある。 「だったら、Jiraにチケットを作った時点でDevinが自動でPRを作ってくれたらいいのでは?」そんな発想から、実際に仕組みを構築してくれました。この発表を聞いた瞬間、Slackには「自分たちのチームにも導入したい」というメッセージが次々と流れていきました。まさに、Win Sessionが目指していた「ナレッジの横展開」が目の前で起きた瞬間でした。

2つ目は、第3回(今年2月)で発表されたStockチームの障害対応の裏側を語った発表です。この発表はストーリー仕立てで構成されていました。障害がどう発生し、事業にどれほどの影響があったのか。その裏で、エンジニアたちがどう動いていたのか。そして最終的にどう解決に至ったのか臨場感のある語り口で共有されました。他チームのメンバーからは「何か障害が起きていたのは気付いていたけど、当時の具体的な状況を知れてよかった」という声がありました。華やかな成功談ではありませんが、「失敗や困難も共有していいんだ」という空気を組織に作ってくれた、とても大事な発表だったと思います。

参加者の声

イベント後のアンケートには出席者のほぼ全員から回答が寄せられ、満足度は4.5~4.9(5点満点中)という高い評価をいただいています。参加者からのいくつかの声を紹介します。

  • 各チームの細かい取り組みを知る機会はあまりないから良かったです。

  • 自分以外のチームでどんなことをやっているかは全くわからなかったため、知る機会をいただけて嬉しかった。

  • 雰囲気も良く、頑張った成果を楽しく讃えあえたのが良かったです。

  • お互いのチームで何をしているのか、頑張ったことを数値だけじゃなく、体感ベースで知れたから良かった。

  • Stockチームの発表内容のような横展開できそうなこと、Storeチームのように目指すべき向き先が見えたことの意義の大きさを感じた。

「各チームの取り組みを知る機会になった」という声が特に多く、組織の透明性という課題に対して手応えを感じました。 内定者インターン生からも「各チームの取り組みや雰囲気がわかりづらかったのですが、今回でよく知れた」という感想をもらい、新しく組織に加わるメンバーにとっても意味のある場になっていることが分かりました。

組織への影響

振り返ると、Jira×Devinの仕組みも、Chrome拡張の自作を含むWin Session自体の改善サイクルも、誰かに頼まれたものではありません。「うまくいかなかった」「ここが不便だ」と感じた人が、次の回に向けて手を動かす、その動き方がバイセルのテック組織には根付いていると感じています。

こうした発表を通じて、「そんなことやってたんだ!」「そういうアプローチがあったのか」という発見が各所で生まれています。他チームの工夫を知ることで自分たちにも応用できるヒントが見つかり、「うちでも同じ問題があった。試してみます」「実はうちも同じ悩みがあったんです」という声から、一緒に解決策を考えるきっかけも生まれ始めています。

将来の展望・ネクストアクション

Win Sessionはこれまでに5回開催し、今ではテック組織のほぼすべてのチームに発表していただきました。一定の成果は出てきていると感じていますが、次のステージに向けた課題も見えてきています。

今後の改善案

現時点で検討している改善案は以下の通りです。

  • 横展開の仕組み化: 「うちでも導入したい」という声が発表時に上がっても、イベント後にはすっかり忘れてしまい、そのまま流れてしまうことがあります。発表後に発表者と興味を持ったメンバーをつなぐ相談会やペアリングの機会を設け、Win Sessionで生まれた「つながり」を実際の行動に変えていく仕組みを作りたいと考えています。

  • テック組織を超えた展開: 現在はテック組織内での開催ですが、社内の他部門との合同開催も検討しています。エンジニアの取り組みを非エンジニアにも伝えることで、プロダクト開発への理解と協力関係を深めるきっかけになるのではと考えています。

まとめ

Win Sessionは、単なる報告会ではなく、組織文化を作る取り組みだと捉えています。

正直に言えば、私自身まだ日常のコミュニケーションに劇的な変化を感じているわけではありません。5回の開催でチーム間のしずかな壁がすぐになくなるほど簡単な話ではないこともわかっています。それでも他チームとの交流が少しずつ増えてきていたり、施策や知見の共有文化が少しずつ定着してきているのではと感じています。

チーム間の壁を越えた知見の共有、お互いの努力を認め合う文化、失敗も含めて学びを共有できる心理的安全性、理想とする組織文化はまだ道半ばですが、Win Sessionがその一助になると信じています。

この記事を通じて、バイセルのテック組織の雰囲気を少しでも感じていただけたら嬉しいです。 まだまだ成長途中の組織です。そんな環境に興味を持っていただけた方は、ぜひ採用ページをご覧ください!