バイセル Tech Blog

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チームが「ワクワク」するために、PMの私が優先度判断で大事にした5つのポイント

こちらはバイセルテクノロジーズ Advent Calendar 2023の23日目の記事です。


前日の記事は高谷さんの「バイセルのデータ基盤構築の道のりを伝えたい - SQLで必要なデータを自由に活用できる環境を目指して -」でした。

こんにちは。 テクノロジー戦略本部開発3部の岡島です。


私はバイセルのリユースプラットフォーム「Cosmos」のうち、インサイドセールス部門(IS)が使用する顧客管理システム「CRM」のプロダクトマネージャー(PM)、エンジニアリングマネージャー(EM)を務めています。 今年5月に開発を開始し、10月に1次ローンチを迎えることができました。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/7685/tdnet/2363314/00.pdf

開発中、当初計画していた要件に加え、現場からの要望もたくさんいただきました。 その中から「やるべきこと」と「やらないこと」、日々取捨選択をしながら開発を進めてきた、当時の振り返りと知見を紹介します。


以下のような課題を持っているPMの参考になれば幸いです。

  • 多くの要望に対して優先度判断に悩んでいる、声の大きい人の要望が優先されがち
  • バックログが積みっぱなしになって整理に困っている
  • 開発チームにワクワクしてほしい、モチベーション高く開発してほしい

CRMの概要

お客様からの買取・査定のお問い合わせを受け、インサイドセールス部門が適切、かつ効率的な顧客対応を実現するシステムです。 お客様の情報管理に加え、店舗や出張訪問の予約、お問い合わせ商材の買取可否など、弊社のリユース事業に特化しています。 また、問い合わせ数や予約数などを記録・集計し、広告出稿の予算配分やお客様の応対方法を変えるなど、データドリブン経営を支えています。

課題背景

私は現場やユーザーの視点、声をとても大事にしていました。 おかげで、開発メンバーは現場を想像しやすく、何かあれば現場へヒアリングに行ってました。 ドメインへの理解と納得感を持って開発を進めてくれました。


その分、現場の部門長やユーザーからたくさんの要望や課題をいただきました。

数が多くなるほどに、すべてを定性・定量的に分析するわけにもいかず、とりあえずバックログに積んでいきました。 開発中はシステム課題も積み重なってきます。 その中から優先度判断をしないといけないのですが、どうしても立場や声の大きさにも左右されてしまいます。 本当に開発すべきものは何なのか、優先度判断がとても大変でした。 そこで、下記5つのポイントを自分に問いかけ、整理していきました。

  • 誰のどんな課題か
  • 誰がどのような状態になるか
  • 事業にどんな利益をもたらすか
  • いつまでに必要か
  • チャレンジ要素はあるか

以降、「買取可能な商材リストを検索できるようにしたい」という要望を例として、各ポイントを説明します。

誰のどんな課題か

まず「誰」が、「何に困っているのか」を明確にしました。 ユーザーの業務や利用シーンが想像できるくらい具体的にできると、課題のターゲット、スコープが明らかになります。

「買取可能な商材リストを検索できるようにしたい」

→ 「新人の問合せ受付担当」が、「新しい商材についてお客様に買取可否を答えられない、時間を要する」

これが分からない場合は、現場に「誰が何に困っているのですか?」と確認しました。 現場からもらった声のはずが、現場も答えられないケースが意外と多く、重要度や個人的意見か判断できないものは、バックログからも除外しました。 重要なものであれば、また要望をもらうだろうと割り切りました。

誰がどのような状態になるのか

次は「誰」が「喜ぶのか、楽になるのか」を明確にしました。 人の感情、メンタル面でのポジティブ要素も考えるようにしました。

「買取可能な商材リストを検索できるようにしたい」

→ 「新人の問合せ受付担当」が、「新しい商材についてお客様に買取可否をすぐに答えられる、焦らない」
→ 「リーダー」が、「問合せ受付担当からの買取可否の相談を受けなくて済む、集中できる」
→ 「お客様」が、「買取可否をすぐに聞ける、待たされない」

課題を感じている人の関係者、お客様も含めて考えていくと、よりイメージが膨らんでいきました。 いろんな人が喜んでもらえるものであれば、やる意味を見出しやすいですよね。

事業にどんな利益をもたらすか

次は「人」から「事業価値」に視点を置き換えました。 喜んでもらえても、事業価値が見いだせないと意味がないです。 売上や利益、もしくは顧客満足度やクレーム数など、質に注目するのも良いでしょう。

「買取可能な商材リストを検索できるようにしたい」

→ 新人の問合せ受付時間の削減、効率化
→ お客様の待ち時間の削減、顧客満足度向上
→ 新人の商材知識の教育コスト削減、立ち上がりのスピードアップ

これは事業ドメインによって様々なため、考察が難しいところです。 私は、課題がたくさん発生するか(=スケール)、何度も発生するか(=頻度)を考えるようにしました。 これらが高いと再現性が高いと言えるでしょうし、そのような課題を現場や部門長に提示していくと、事業上の課題や価値を自然と教えてくれることも多々ありました。

いつまでに必要か

意義や目的が明確になって、判断がしやすくなりましたが、さらに「今すぐに必要とするか」といった時間軸や順番などを加えていきました。

「買取可能な商材リストを検索できるようにしたい」

→ 買取可能な商材は増えている、一方で新人の商材知識の教育にはコストがかかる。新人の立ち上がりに大きく貢献が期待されることから、新入社員配属までに現場で浸透させることを目指して、今年中に機能提供したい。

いつかできたら良いけど今じゃなくても良いもの、来期で良いもの、と考えていくと、本当に今必要なものは限られてきました。 ただ、これも事業環境や体制など自社の状況とともに変化していくので、定期的に見直すのが良いでしょう。

チャレンジ要素はあるか

小さくてもいいので、個人やチームのみんながチャレンジだと感じられる要素を盛り込むようにしました。

  • 会社・事業へのインパクトが大きい。
  • 現場が喜んでくれる、期待してくれている。
  • 新技術、社内で前例のない技術に取り組む。
  • 新しい役割、責任を担う。

特に、大きな変化、やったことがないこと、個人の成長、といった視点で考えました。

「買取可能な商材リストを検索できるようにしたい」

→ 毎年多くの新入社員を迎えており、かつ会社の成長とともに取り扱う商材種類も年々増えている。対象とする社員や得られる効果が大きい。
→ 現場の期待感が高い。
→ 社内でも実績のない技術、サービスを利用する。

創るのは人間です。 ロジカルにやる意義・目的を明確にしつつも、チャレンジ要素があることで、開発へのモチベーションは高めることができました。

まとめ

改めて立ち返ってみると、現場やユーザーからの要望や課題というのは、「システムがこうなって欲しい」といったソリューションのイメージが大半でした。 そのままだと作りやすさ、工数を軸に整理し、判断していたでしょう。 上記5つのポイントをもとに整理することで、PMとして下記のような効果を感じました。

  • 今はやらない、考えないと判断しやすくなった。
  • 開発の意義や目的が明確になり、やる理由、やらない理由を説明しやすくなった。
  • 要望リストやバックログが減らせた。

おかげで、重要な企画や要望に注力しやすくなりました。


また、開発チームとして下記のような効果を感じました。

  • 納得感をもって開発してもらえた。
  • 自ら要望背景を調査、ヒアリングしにいくシーンが増えた。
  • 自ら課題解決に繋がるアイデアや考察を提案してくれるようになった。

実際、ローンチできた時はみんながホッとしたし、達成感も味わうことができました。 また、誰が喜んでくれているのか想像しやすかった反面、ユーザーに価値を届けられただろうか、もっと良いソリューションにできたと心配や反省をするメンバーもいました。 開発チームのみんながやりがいを持って取り組めた証拠だと思っています。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 こちらの入社エントリも読んでいただけると嬉しいです。 バイセルではPM、EMを募集しています。興味がある方はぜひご連絡ください!

明日は松榮さんによるバイセルのtech組織の取り組みとその裏側です。お楽しみに!