この記事はバイセルテクノロジーズ Advent Calendar 2023の24日目の記事です。
バイセルテクノロジーズ テクノロジー戦略本部 本部長の松榮です。
2023年は私自身の変化として本部長就任がありました。一方で社内ではテクノロジー活用において大きな変化と成長の兆しを感じることができた年でした。
この記事では総合リユースビジネスを手掛けるバイセルがテクノロジーを通じて出した成果を振り返ります。
背景
私たちのMVVのVision「優れた人と新たな技術で、循環型社会をリードする。」には、「技術」というキーワードが掲げられています。
一方で技術の活用についてIR以外にはまとまった成果が公開されていません。
この記事ではどんな事にテクノロジーが活用されているのか、この1年のテクノロジー活用事例を紹介します。
リユースプラットフォームCosmosについて
Cosmosはリユース業に関わるプロセスをマイクロサービスとして提供し、バイセルグループ内への導入を進めています。
ビックバンリリースではなく、プロダクトのMVPを定義しグループ内で導入スピードと効果最大化を意識してシステムの開発をしています。
リリース済のいくつかのプロダクトの役割と成果のサマリ、どのようにテクノロジーを活用しているかを紹介します。
Store 店舗買取
店舗での買取に特化したプロダクトで、お客様情報の入力や査定商品の管理、契約や決裁まで、店舗での買取に必要なフローを網羅しています。 Storeはこの1年で最も利用拡大したプロダクトとして、効果の実感の声と多数の要望が寄せられるプロダクトです。
急速な店舗拡大とそれに伴う新入社員教育が必要でした。 また接客という行為が属人的なためデータを取り、イネーブルメント組織やマーケティング組織での活用ニーズがあるためシステムによるサポートが求められていました。
成果サマリ
- お客様情報の入力が平均4分から1分以内に完了
- 新人社員の研修時間が1ヶ月から1日に短縮
- 直営店だけでなく、フランチャイズ店舗にもトライアル導入
テクノロジー活用ポイント
- OCRによるお客様情報の自動入力
- 洗練されたUI/UXによる研修コストの改善
- 接客におけるシステム操作時間の短縮と可視化
Appraisal 専門査定
商品毎の専門の査定士と買取チャネルのプロダクトを結び、 画像データや商品情報から商品を特定し効率良くプライシングを行うためのプロダクトです。
査定はリユースビジネスにおいてスピードと正確性を要求される非常に重要な役割を持っているのですが、専門性が高い領域のため人材確保が難しい側面があります。 専門の知識をシステムに落とし込み事業として成長に耐えられる状態が求められています。
成果サマリ
- チャット機能によるStoreとのシームレスな査定
- Promas(商材マスタ)との連携により査定の効率化
テクノロジー活用ポイント
- チャットによるリアルタイムの査定サポート
- WebRTCによる動画査定の検証
Promas 商材マスタ
膨大な商品情報と価格のマスタを構築し、様々なシステムと連携する事で査定時間の短縮や商品情報の自動補完を行うためのプロダクトです。 商品を特定する方法として、商品データから検索やAIを活用した画像から商品を特定する事ができます。
リユース品は日々相場が変動します。リユースビジネスにおいて査定や販売時の正しいプライシング出来るというのは事業に直結する影響を持ちます。 その為にはシステムによるスピードと正確性をもって商品情報を提供する必要があります。
成果サマリ
- 査定時間が3割削減
- プライシングのブレの安定化
- 商品情報の補完による入力ミスの減少
- AI活用により査定時間が5分から20秒に短縮
テクノロジー活用ポイント
- マイクロサービスとして社内の様々なサービスと接続
- 商材情報の正規化においてChatGPTを活用
- AIによる画像査定の実現
CRM 顧客対応
CRMはインサイドセールスにおける顧客対応の効率化と新人社員の早期立ち上がりをサポートするプロダクトです。
コールセンターではお客様との会話をしながら会話内容をリード情報としてデータ化しています。 お客様のニーズを知る事で最適なルートと最適な査定士の訪問計画をたてる事ができます。
会話の情報からデータへと落とし込むには非常に高度なスキルを必要としています。 専門性と高度なオペレーションを必要とする業務をシステムにより安定化と効率が求められています。
成果サマリ
- 社員が習熟する必要があった知識や経験ポイントをアルゴリズム化することでコア業務に集中
- 新人社員の研修が30時間から4時間に短縮
- 買取キャンペーンなどの施策をアルゴリズム化することで統制を取る事が可能
テクノロジー活用ポイント
- 洗練されたUI/UXによる研修コストの改善
- 人間の判断軸をアルゴリズム化
- 音声データの解析や人別のトークスキルの評価のPoCを実施
Stock 在庫管理
Stockでは様々な買取チャネルと連携し、店舗や拠点間の在庫を一括管理を行うことで在庫移動や取引を行えるプロダクトです。
これまでのバイセルの在庫管理システムは出張訪問買取やtoB取引が中心に設計されていました。 現在のバイセルグループでは急速な事業成長に伴う在庫拠点の増加とともに、M&Aによってグループ企業が増えたこともあり、 在庫移動や統合が求めらるようになったため事業にあわせた在庫アロケーションが求められています。
成果サマリ
- M&Aによってバイセルグループへjoinしたフォーナイン社への導入
- オペレーション体系化による管理統制の実現
- 買取と販売データの蓄積・見える化
テクノロジー活用ポイント
- Webシステムからバーコードや商品情報などを印刷するラベルプリンタ(ハード)との連携
- 商品種別や在庫アロケーションの柔軟性をもった設計
Pocket データ基盤
Pocketはバイセルグループ内データを集約し、社員が安心して利用できるデータ基盤です。
バイセルではグループ横断で取得した定量データに基づき全社最適な戦略を決定するデータドリブン経営を推進しています。 その為、バイセルグループの成長にあわせて大量のデータを扱う事が出来るデータ基盤の構築と提供が必要でした。
成果サマリ
- 400名ほどの社員がデータ基盤を利用
- 個人情報をマスクした事で全社員が安心してデータを活用
テクノロジー活用ポイント
- CDCによるニアリアルタイムなデータセットの構築
- GCPのDataformを利用したBigQueryのデータパイプラインツール活用
- 大量のデータから統計・機械学習へのデータ活用の実施
Cosmos以外の社内DXについて
私たちはリユースプラットフォームに属さないプロダクトの開発も行っております。
事業成長を加速しグループ会社含めて成長するためにはバックオフィスのサポートや、全社員がテクノロジー活用出来る環境を作っていますのでその一部を紹介します。
マネートランスファー
マネートランスファーはAPI経由でお金を送金するというシンプルな機能のプロダクトです。 利用としては基幹システムやワークフローからの連携され即時に送金を行っています。
リユースビジネスにおいて送金の早さは非常に重要な要素となります。 これまでは人の手を介する部分が多く、社内のワークフローを利用し支払いの申請プロセスを経て経理から銀行振り込みをしていました。 しかし、BtoB取引先や社内の各営業所など大量の口座に対して即座にお金を動かす必要があった為開発されました。
成果サマリ
- 取引先に対して最短当日の送金を実現
- オークションシステムとの連携により、オークション終了後翌日には送金完了
- 自動化によるオペレーションミスの抑制やオペレーション工数の削減
テクノロジー活用ポイント
- サーバレス構成による軽量なプロダクトの実現
- マイクロサービスとして構築する事で利用しやすい設計
宅配買取
Webによる申し込みとeKYCを利用した本人確認出来るプロダクトです。
これまで本人確認手法は郵便を利用していました。 ですが、郵便は受け取れるタイミングが限られており取引のリードタイムが長くなる傾向がありました。 これによりUXの低下による取引キャンセル、高額な郵便料金などの課題が多くシステム化による改善が急務な状況でした。
成果サマリ
- お客様への入金にかかる期間が1/3に短縮、最短で翌日入金が可能
- 本人確認のコストを半額以下に削減
テクノロジー活用ポイント
- eKYCによる本人確認
BuySell Buddy 社内ChatGPT
バイセル社員がChatGPTを安心して利用するための社内AIサービスBuySell Buddyを開発しました。 社内の様々なアプリケーションとの連携を想定し、第1段階として社内のコミュニケーションツールのSlackと接続しています。 グループ社員の誰もが安心して手軽にChatGPTを利用できるようになりました。
現在は社内固有の情報を取り込み、リユース業界としての活用ができるサービスへと改善中です。
成果サマリ
- グループ全社員のAI活用基盤の提供
- 多い日には400回以上活用されており、グループ全体の生産性向上に寄与
テクノロジー活用ポイント
- ChatGPT APIの活用
- 様々なシステムと連携出来る柔軟な設計
- 利用状況のモニタリング設計
おわりに
2023年、Cosmosはリユースプラットフォームとしての基盤の整備を進め、各サービスが独立して成果を出すことができました。 一方で、サービス間の連携は未だ完全ではなく、本来のポテンシャルを出し切っていない状況です。
2024年から各サービス間の連携が始動するとともに、現在まだ開発中のいくつかのプロダクトもリリースと現場導入を予定しています。 リユースプラットフォームとしての大きな構想がようやく形となってきた事で、 バイセルグループ全体をテクノロジーによって押し上げ、リユース業界に対して価値を出せるテック組織となるよう挑戦を続けていきます。
最後に、BuySell Technologiesでは熱量をもって大きな挑戦をする仲間を募集しています。