バイセル Tech Blog

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新卒勉強会を継続させるために、あえて運営をやめた話

はじめに

こんにちは。開発3部もとい23新卒の金澤です。

バイセルでは日夜さまざまな勉強会が立ち上がり活動していますが、23卒同期一同もあるテーマに沿って”23卒勉強会”を毎週〜隔週で開催しています。2022年夏頃のインターン時代から実施しているこの勉強会は、運営が運営をしないという少し変わった活動形態を取っています。

勉強会の様子

本記事では、23卒勉強会の総合運営がなぜ運営をしていないのか、勉強会の持続可能性を保つために何をしたのかを、総合運営の立場からご紹介します。

私たちが行ってきた、組織が自走するための規範を作り上げていく中での試行錯誤が、コミュニティを活性化するアクションへのヒントとなれば幸いです。

23卒の同期たち

バックボーンも専門も異なる多種多様な11人が、23新卒の同期として入社しています。社外の方と合同イベントを開いてみたり、社内向けGPTサービスを作っていたりと、さまざまな分野で活躍している自慢の同期です。

tech.buysell-technologies.com

note.com

金曜日の退社後、11人全員でそのまま弾丸旅行に出掛けるほど同期仲も良好ですが、23卒が活発なコミュニケーションを保てるきっかけになったのが、現在も続く23卒勉強会だと思っています。

発端と転換期

はじまりは、誰も辞めさせたくない、という思いから

一昨年の夏、インターンの頃から始まった23卒勉強会ですが、発端と当時の思いをご紹介します。

立ち上げ時に重視したことは、同期でのコミュニケーションを活性化させることです。キャリアを歩み始める上で重要な新卒という時期に、共に支え合い成長していけるような環境を作りたかった、それが回り回って新卒の早期離職を防ぐことにもつながって欲しかった、というのが会を立ち上げた発端となります。

仕事上、同じ部署やプロジェクト内のメンバーと関わる機会は多くありますが、他のチームとの繋がりが薄くなりがちです。この勉強会では、そうした「横のつながり」を強化し、同期での交流の場を提供することを目的にしました。

初期の23卒勉強会は、勉強会というよりも相互お悩み相談会と言った方が正しいものでしたが、同じ会社に新卒で入る同期同士での知見共有や不安を話せる場として、繋がりを強めたいという目的だけはブレないように意識して運営していました。

4月の正式入社が近づくにつれ、インターン経験者だけでなく同期がちゃんと全員集まれること、社員として業務時間を割く以上、より有意義な集まりにすることを考えるようになりました。刷新した勉強会のスタートを、入社後の新卒研修が落ち着く6月と定め、コミュニケーションの場であることは前提に、「同期全員で成長できる場であること」を目標に再設定しました。

これらの思いや目的意識をもって、新卒研修で感じたチーム開発の難しさや組織への関わり方を見つめ直すため、Team Geekの輪読会を正式な第1回23卒勉強会として開催することになりました。

www.oreilly.co.jp

見つけた課題

輪読会を通して「HRT(謙虚, 尊敬, 信頼)」をはじめとするGoogle的なソフトウェアエンジニアリングを学ぶことができた点や、議論を踏まえて内容をより実践的な理解へ落とし込むことができた点は大きな学びに繋がったと思います。

また、運営としても、単に書籍の読み合わせの場で終わらせるのではなく、得た学びを個々人が日々の業務で活かせる様に会議体の調整やファシリテーターのローテーションなど、相互的なアクションが促されるような仕組みづくりを行いました。

実際の輪読会メモ

しかし、それでも会終了後の振り返りでは「運営負担の大きさ」と「モチベーション維持」という2つの課題が上がりました。

  • 運営負担の大きさ
    • 会の方針、書籍の選定、振り返り、改善策の立案… 等、一定やることが多い
    • 前述した通り各々のバックボーンの違いから合意形成が難しく、全員の学びを最大化させるための施策の立案が難しい
  • モチベーションの維持
    • 輪読会では「全員が事前に読んでくる」上で「活発な議論」の発生が期待される
    • そもそも課題図書に対する興味の度合いは異なる上、参加意欲もまちまち

これらを踏まえて、輪読会の継続か、はたまた別の形式にするのかという企画方針や、運営体制そのものを考え直すことにしました。

運営メンバーをローテーションするという施策

同期で成長する場という会の目的を考えたとき、輪読会をやり続けることで達成されるかというと難しいでしょう。意欲が下がることで参加者が減っていった場合、それこそ同期で勉強会を行う意義が薄れます。

企画を長く続けていくためには、参加者が能動的に取り組んでくれる何かが必要だと考えました。ここで閃いたのが、運営メンバーをローテーションさせる、という方法です。

勉強会を企画して合意を取り、意見を回ごと反映し、クロージングのアンケートを取って公開する。

勉強会の運営というこの一連の流れをやり切ることは確かに大変でしたが、改善するサイクル自体は楽しいものであり、成長する機会でもありました。同期みんながこの経験をすれば、参加者として以外の何かを持ち帰ってもらうことができます。

つまり、私たちで勉強会を運営するための仕組みや規範を作り、運営メンバー自体をローテーションさせることができれば、運営という立場による会への能動的な参加意義を追加できると同時に、自身のやりたい企画を持ち込むことで多様性の確保と企画への不満の緩和が見込めると考えました。

現行の23卒勉強会

円滑な運営を仕組み化するために定めた、今も実施されているガイドラインをご紹介します。

まず、勉強会をシーズン制にしました。惰性で実施されることを防ぐことを目的に、原則として各期を最長2ヶ月とし、最低でも隔週開催という制限を設けています。

運営メンバーについては、期ごとに3人選出して企画の立案からクロージングまでを担当してもらいます。テーマ決定から進行方法の設計、各回の反応を見ながらPDCAサイクルを回して改善を図ります。期の終了時には、全体を通したアンケートを実施し、そのフィードバックを次の運営チームに引き継ぐまでを責務としています。さらに、運営ローテーションが一巡するまでの施策として、少なくとも一人の現運営メンバーが次期運営にも参加するというルールを設けています。これにより、運営のノウハウが可能な限り引き継がれるよう配慮しています。

第1期勉強会〜第2期勉強会へ移る際のスケジュールイメージ

総合運営の自分たちは、必要に応じて企画会議の壁打ち相手になったり、期の切り替わりに実施する期を通しての振り返り会をしたりと、23卒勉強会全体が円滑に進められるよう裏方的な役割に徹しています。

総合運営メンバーが直接運営に関わらないという逆転の発想と、それを実現するための仕組み化によって、企画に多様性が生まれました。また、同期全員が運営経験をする機会を得たことで「同期と共に成長する」という目標を達成し、23卒勉強会の持続性も大幅に向上したと感じています。

具体的な企画たち

実際にやってきた23卒勉強会の企画や、各期の運営メンバーが実施した秀逸な施策をいくつかご紹介します。

第2期|LT会

輪読会が終わった直後の第2期では、技術・非技術問わないなんでもLT会を開催しました。同期だけでも

  • 店舗での査定現場に1週間お邪魔して課題をひたすら探し続けた話
  • USB Type-Cがいかに複雑かという話
  • 経営数字で見るバイセル

上記をはじめとして、さまざまな内容での登壇がありました。

開催時間帯・場所をお昼時の休憩スペースにすることで誰でも気軽に聴衆として参加できるようにしたり、CTO室のマネージャーからもゲスト登壇してもらったりするなど、23卒以外にも関わることのできた期となりました。

第3期|アルゴリズム勉強会

第2期とはうってかわって、自分の手を動かしたいという意見を踏まえて開催されたのがこちらのテーマです。二分探索やバブルソートの原理といったものから、暗号化手法やビット演算などを学びながら、実際にコードを書くことで実装してみるというコンセプトでした。

こちらで実施した内容は、第3期運営の一人である那仁さんがZenn Booksで公開しているのでぜひご覧ください!

講師役をローテーションしながらテーマについて調べて発表しつつ参加者に問題を解いてもらうという形式でしたが、最初の数回を第3期運営メンバー自らが講師を担当することで回の進め方のモデルケースを提供しており、見事なファシリテーションでした。

第4期|コンピュータサイエンス基礎勉強会

記事執筆現在(2024年3月上旬)、絶賛開催中の勉強会です。前期はあくまでアルゴリズムを学ぶことが目的でしたが、応用情報技術者試験で出題されるような事例ベースの問題をもとに、コンピュータサイエンス全体を体系的に学ぶことをテーマに開催されています。

問題に対するリアルな議論が発生したり、実際に応用情報技術者試験を受ける同期も居たりと、23卒自体も少しずつ成長している実感があるのが総合運営として何より嬉しいです。

23卒勉強会の今後

今年の上期で、運営メンバーのローテーションが一周します。運営ローテーションはあくまで仕組み化の一例だと考えており、一通り終わった後のフィードバックも参考に、勉強会のやり方も変えていく、というか変わっていくことが普通でなければなりません。

業務に従事して1年以上が経ち、各々のスキルも変化している中で、自分たちを成長させるために何ができるかを改めて見直して、23卒勉強会の立ち位置を定めることになるでしょう。

これは、バイセルのバリューの1つ”クリエイティブ”にも含まれる「変化を楽しむ」にも通じることであり、どんな組織においても変わらない考え方ではないでしょうか。

結びに

本記事は、「同期でコミュニケーションを取る場を作りたい」と始めた勉強会を、より良いものにするために試行錯誤した記録となります。

ただやるだけでなく、何をなし得たいのか、何を持ち帰って欲しいのかを考えた結果、運営をローテーションするという仕組みに辿り着きました。運営を仕組み化して総合運営メンバーがあえて運営をしないという選択肢によって、勉強会への当事者意識を引き出しつつ、同期で成長する会にするという目的にまた一歩近づいたと思っています。この勉強会が続けられているのも、何より同期みんなの協力があってこそです。

この取り組みが、コミュニティに自主性と持続可能性の芽を生やす一助になったと思います。私たちの経験が、何か新しいことを始めたいと考えている方々や、自発的な活動を推進したいと思っている方々にとって、1つのヒントになれば幸いです。

最後に、BuySell Technologiesでは一緒に働く仲間を募集しています。興味がある方はぜひご応募ください!

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