はじめに
こちらはバイセルテクノロジーズ Advent Calendar 2021 の24日目の記事になります!
前回の記事は杉田さんの「過去一やらかしにやらかしを重ねた話を供養する」でした。
こんにちは、情報システム部の天野です。
バイセルテクノロジーズでは今期コミュニケーションツールとして全社でSlackを導入しました。導入の旗振りは情報システム部(私含め4人)で担当しました。設定からガイドラインの策定、各部との調整などかなりいい経験を積ませていただいたと思うのでみなさんにシェアできればと思います。ぜひこれから、Slackを導入する方の参考になればと思います。
なぜコミュニケーションツールとしてSlackを導入したのか
バイセルテクノロジーズではもともとコミュニケーションツールとして別のチャットツールを利用していました。すでにコミュニケーションツールは存在していたわけです。
ではなぜコミュニケーションツールの置き換えを行ったのでしょうか。
それは、「オープンなチャット環境」を実現したかったからです。
「オープンなチャット環境」と言われても??となると思うのでここからは社内向けに公開した資料を交えながら説明していきます。
「オープンなチャット環境」とは「いつでも、だれでも、必要な情報があれば取りにいくことが可能であり気軽に意見を言える場があること」と定義しました。
この「いつでも、だれでも、必要な情報があれば取りにいく」ということが既存のチャットツールではどうしても実現することができませんでした。既存のチャットツールのグループ機能は基本的にクローズドなチャット環境でした。グループを検索することもできませんし、グループを横断した検索機能もないので自分から情報を取りに行くというのが非常に難しかったのです。なので別のコミュニケーションツールへの変更を決定しました。
これは決して既存のチャットツールが悪いと言っているわけではなく、バイセルテクノロジーズが目指していく方向性と合わなかっただけだと思っています。業務によっては「クローズドなチャット環境」が必要になるパターンもあります。
さてもう少し話を深堀りして、「オープンなチャット環境」で得られるメリットとはなんでしょうか?
主にこの5つがオープンなコミュニケーションのメリットだと思っています。
ただ、本当は1つ1つ説明したいところですがそれだけで1記事になってしまいそうなので割愛します。
このあたりのオープンなコミュニケーションのメリットについて非常に参考にさせて頂いたものがあるのでシェアします。
チャットコミュニケーションの問題と心理的安全性の課題 #EOF2019
SlackでDMを使わない方がいい理由をGIFにして説明してみた - Qiita
導入までの大まかなTodoと流れ
導入までのTodoと流れを簡単に振りかえってみます。
Todo
- Slackの設定&運用決め
- ガイドラインの策定
- 既存Slackの整理
- HelpDeskシステムとの連携設定
- 各部ヒアリング
- マニュアル・資料 作成
- 申請系のワークフロー準備
流れ
- Slackの設定&運用決め
- ガイドライン作成
- Tech組織での先行運用テスト&ガイドラインと設定の再設定
- 各部ヒアリング
- アンバサダー招待&先行運用を開始
- アンバサダー向け説明会実施
- 全社展開
Slackの設定&運用決め
まず初めに取り掛かることはここです。Slackの設定とそれに関する運用を決めます。ここが決まらないとこの後やらなければいけないガイドラインの策定がなにもできません。なので一番重要です。
具体的に行ったこと
Confluenceにすべての設定を書き出します。
すべての項目について方針と設定値を決めていきます。
設定・運用決めで悩んだ点、重要なところ
- Slackbot機能、ユーザーグループ機能、ワークフロービルダー機能などのチャット機能とは別で利便性がある機能をどうするかという点
- 既存のチャットツールからSlackへの移行だけで社員の皆様がいっぱいいっぱいになる可能性が高く、最初は混乱を防ぐためにSlackbot機能とユーザーグループ機能は無効にした状態で導入を行いました。導入後ユーザーから「ユーザーグループ機能は有効化してほしい」という声が多かったためこちらは有効化しています。
- デフォルトのチャンネル
- デフォルトのチャンネルとはSlackのワークスペースに参加したときに最初から参加しているチャンネルになります。こちらは現状3つ作成・設定してあります。
- #all-buysell-pr-news
- #all-buysell-top-message
- #all-slack移行に関する問い合わせ
- ここの設定は正直いまも迷っているところです。どうコミュニケーションを活性化させようか、どういったチャンネルがあったら入社者はうれしいのか。。会社規模が100人ぐらいのステージなら全社の雑談チャンネルがあったもいいかなとか思ったり。。でもうちの規模感だと作ったとしても利用しないよなとか思ったりいろいろ悩んでいます。
- デフォルトのチャンネルとはSlackのワークスペースに参加したときに最初から参加しているチャンネルになります。こちらは現状3つ作成・設定してあります。
- ファイルの保存と削除
- Slackはあくまでコミュニケーションツールとあり、ストレージではありません。Slack上に直接アップロードされたファイルについてはアクセス制御もなにもないので保存される期間は短いほど良いです。ただ、ここの設定は運用上制御してしまうと業務に影響が出るため一旦無制限にしています。ユーザー側の使い方としては一旦GoogleDriveにアップロードしていただきURLで共有してもらえると嬉しいのですが・・情シスとしては仕組みで解決したいですね。最近発表されたニュースにもBOXとの連携について記載されてましたので注目していきたいです。
- チャンネル管理
- ここは悩んだ点というより、うちの設定のキモになるので共有します。この設定の中に「プライベートチャンネルを作成できるメンバー」という項目があるのですがこれは「ワークスペースのオーナーのみ」に限定しています。これは結局プライベートチャンネルが増えていくとコミュニケーションが分断されていくからです。なのでプライベートチャンネルの作成についてはすべて申請制をとり、特例(人事・給与情報など取り扱う場合)を除いて作成しない運用にしています。このプライベートチャンネルの扱いについては令和2年度経済産業省デジタルプラットフォーム構築事業報告のP70,71にも記載があるのでぜひ確認してみてほしいです。
- Slackコネクト、ワークスペースへのアプリインストール、ゲストの招待など承認系の運用
- 弊社では上記の申請はすべて申請制にしています。コネクトする会社は取引先として登録されているか、アプリは過剰な権限が付与されていないか、ゲストは関係会社の方なのか申請上で確認してから承認を行っています。
- 承認を飛ばす先はチャンネルにして、関係者で運用しています。
- 弊社では上記の申請はすべて申請制にしています。コネクトする会社は取引先として登録されているか、アプリは過剰な権限が付与されていないか、ゲストは関係会社の方なのか申請上で確認してから承認を行っています。
検証
設定の見直しと並行して下記の検証も進めていきました。
- ゲストアカウントの動作確認
- GoogleAuthの動作確認
- Slackコネクト の動作確認
ここはどうしてもSlackを使ったことがなかったので必要なフェーズになります。
また、本当はSSO、SAMLを利用したかったのですが予算の関係上GoogleAuthを認証に利用しています。GWSはSSOしているので間接的に認証が取れる構成にしました。
Welcomeメッセージの設定
細かいところですが入社したらまずはガイドラインを読んでほしかったのでWelcomeメッセージを設定しました。設定方法はワークフロービルダーを利用しています。
※「#all-buysell-全体配信」というのは#generalチャンネルのことです。
ガイドラインの策定
設定が決まったらあとはガイドラインの策定です。
Slackは非常に自由に使えるツールなのでガイドライン的な決め事がないとすぐにカオスになります。なので設定と運用が決まったら次にここを固めていきました。
自社ガイドラインを作成するにあたり参考にさせていただいたもの
Kyash様
recruitment/slack_rules.md at master · Kyash/recruitment · GitHub
SmartHR様
SmartHR Slack の歩き方【完全版】運用ガイドライン / マニュアル / ルール - Qiita
こういうものを作成しました。
ガイドラインは初めから完璧の物を目指さなくてもいいです。運用していく中でユーザーからの意見で書き直すことがかなりありました。80%ぐらいを目指して作成して公開、あとから修正していくのが効率いいかもしれません。
既存Slackの整理
「設定・運用・ガイドラインも決めた。あとは公開するだけだ」と思ったのですがそれはできませんでした。。というのもバイセルテクノロジーズのTech組織はコミュニケーションツールとして既存のチャットツールではなくSlackを以前から利用していたからです。そして全社で利用するワークスペースはTechで利用していたものを流用する予定でした。なので全社公開する前に既存のワークスペースをガイドラインに沿ってキレイにする必要があったのです。
具体的に下記を行いました。
- チャンネル名のリネームとアーカイブ
- 利用していないチャンネルのアーカイブ
- 命名規則に従ったチャンネル名の変更
- 絵文字の整理
- 退職した人の顔写真があるんですが。。みたいなあまりよろしくない絵文字は削除していきました。
- 権限の変更
- Slackの運用は情シスに委任されたので複数いたadminを削除し、権限を整理しました。
- アプリの整理
- 使われていないアプリや、利用用途不明のアプリを削除していきます。
- カスタムインテグレーションでWebhookっていう名前だけで利用用途不明のアプリがたくさん。。
- 実はまだ整理中です
- ゲストアカウントの整理
- もう関係会社ではない方のアカウントなどがありましたので削除していきました。
- ワークフロービルダーやユーザーグループの整理
- これも利用していないグループやワークフローがあったので削除していきました。
全社導入する前のSlackは特にルール等を定めていなかったので、整理するのがかなり大変でした。ガイドラインの大事さを再認識しました。
これはSlackに限った話ではないですが運用していく中でどうしても定期的にメンテナンスが必要になってくるものが情シスには付き物です。※PC資産台帳、Googleのグループなどなど
それを運用・仕組みでにいかにキレイにたもてるかというのも情シスの役割だと思っています。なのでこういった作業は最初だけでなく定期的に行っていく必要がありますね。
「Slackの治安は俺が守る」ぐらいの意気込みでやっていきたいです。
HelpDeskシステムとの連携設定
弊社ではヘルプデスクのシステムとしてJSM(Jira Service Management)を利用しています。従業員から情シス、開発、総務、人事、経理への問い合わせはJiraに集約させようとしています。
JSMとSlackとの連携はあることはあるのですがあくまでエージェント側のみです。カスタマーへの通知はSlack アプリでは行うことはできませんでした。
なのでカスタマーへの通知をJira Automationで設定しました。詳細は割愛しますが、カスタマーがヘルプセンターから問い合わせをするとこんな感じにSlackに通知を飛ばしています。
Tech組織での先行運用と各部へのヒアリング
ガイドラインが固まってきたらあたりからTech組織での先行運用を開始しました。ここでガイドラインのおかしいところを洗い出す感じですね。チャンネル名のプレフィックスや、アプリの運用方法などをこの段階で細かく修正していきました。
並行して各部にヒアリングをしました。主にヒアリングした点は下記です。
- 不安な点
- 必要なプライベートチャンネル
- 必要なゲストアカウント
- 必要な外部システムとの連携
- アンバサダーの選出
既存のチャットツールからなぜSlackへ移行するのか簡単に説明し、不安な点などをヒアリングしました。感想を箇条書きすると
- 部によっては必要なプライベートチャンネルを100以上出してきて、驚いたのとSlack導入の意図の説明が足りなかったと反省
- クローズドなコミュニケーション大好きだなと率直に思った。この組織文化というのはSlackを入れただけじゃ絶対変わらなくて地道な啓蒙活動が必要だなと思った
- 既存のチャットツールのToDo機能使っている部署結構多かったなと印象
- 外部システムと連携している部署はあまり多くなくて、ここはSlackのアプリを活用してほしいと思った
などなどです。
ここでヒアリングしたプライベートチャンネル・ゲストアカウントはすべてチェックして本当に必要なチャンネル・アカウントなのか各部と調整して運用までに作成しています。地味にというかここの調整が一番きつかったと思います。対応したのは僕ではなかったのですが本当に感謝しています。
また、このタイミングで各部でSlackアンバサダーを選考していただいています。アンバサダーとは簡単に言うと各部でSlack導入の旗振り役をしていただく人ですね。
アンバサダーに情シスとして期待していることは大きく分けて4つでした。
- Slack自体の使い方を部内共有
- 質問の1次受け
- ガイドラインや運用への意見、同僚や部署で受けた意見を運用をフィードバックしていただくこと
- Slackを利用したコミュニケーションの考え方を共有
マニュアル・資料の作成
諸々の作業と並行してマニュアル類の整備を進めていきました。
- Slackの初期設定 PC&iPhone
- Slackの使い方
- Slackコネクトとゲストアカウントの申請方法
- プライベートチャンネルの作成申請について
- ToDoBot 操作方法
などです。資料・マニュアルはすべてConfluenceで作成を行い、JSMのナレッジベース記事として社内に展開を行いました。
各ワークフローの用意
弊社ではワークフローのシステムとしてKintoneを利用しています。Slackに関するワークフローもいくつか用意しました。
- Slackコネクトに関する申請
- コネクト先は反社チェックなど取引先として登録されているのか確認しています。
- ワークスペースへのアプリインストールに関する申請
- アプリに余計な権限がないか確認しています。
- とくにカスタムアプリは注意して確認しています。
- ゲストに関する申請
- ゲストは取引先の人なのか確認しています
- プライベートチャンネルに関する申請
- 本当に必要なチャンネルなのか確認しています。
- 承認経路には役員が入っており、かなり厳しめに確認をしています。
アンバサダー招待&先行運用を開始
ここまでのTodoがある程度終わってきた段階で先行して各部から選出したアンバサダーの方々を招待してSlackの先行運用を開始しました。
アンバサダーの方には先行運用の中で各部で必ず必要になるチャンネルの作成などを行っていってもらいます。あとSlackをたくさん触ってもらって部内からの質問は答えれるように慣れてもらいます。
この段階ではたくさん質問が出てくるのでSlack移行用のチャンネルを作りそこで回答を行っていました。
アンバサダー向け説明会実施
先行運用を開始してアンバサダーのの皆さんがSlackに慣れてきた段階で改めて「なぜSlackを導入するのか」ということを改めて1時間ほどお時間をいただき説明会を実施しました。
これはアンバサダーの皆さんには絶対にSlackを導入する意図、「オープンなコミュニケーション環境にしたいよ」ってことを伝えたかったからです。そして、その意図を部内で広めてほしかったからです。
資料はこんな感じ。
全社運用開始
アンバサダーの皆さんに説明会を実施した後、全社運用を開始しました。
先行運用の段階である程度質問が出てたり、ガイドラインの書き直し、運用の問題点を修正していたので全社展開ではそこまで問題になったことはありませんでした。
まとめ
ひとまず、大きな問題なく移行ができたことに胸をなでおろしています。
よかった~~!
そして、直近のアナリティクスを確認しても1日1万件を超えるやり取りがSlackでされています。また、パブリックチャンネル数は1000件を超えました。
まだ、移行したばかりなのですぐにコミュニケーションの方法が変わるとは思ってなくてゆっくり時間をかけて、オープンな、皆さんが働きやすい環境を目指していければと思っています。
ツールを入れて「ハイそれで終わり」というわけではなくてここからの運用のフェーズが大事で、難しいところになるので気を引き締めていきたいです。
情シスの求人はないのですがバイセルではエンジニアを募集中です。
明日のバイセルテクノロジーズ Advent Calendar 2021は今村さんによる「バイセルの現状について」です。お楽しみに。
最後まで読んでいただきありがとうございました!